ベトナム国立小児病院の手術に参加しました!
2023.08.30

当科小谷が4年前にベトナム国立小児病院にて指導した小切開手術が、700例に達したので、久しぶりに訪問して再度指導を行いました。
この様子についての地元の記事を紹介します。

 

脇下の小切開手術によって治癒した先天性心疾患の子どもが700人に達する

ベトナム国立小児病院で、Fallot四徴症を患う生後10か月、体重わずか5.5㎏の乳児が、右脇下を指程の長さで切開する低侵襲心臓手術を受けた700人目の患者となった。
8月7日、国立小児病院小児心臓病センター所長のグエン・リー・ティン・チュオン医師と、岡山大学病院心臓血管外科准教授の小谷恭弘医師によって、6時間に及ぶ手術が行われた。小谷医師は5年前にこの技術をベトナムに伝えた人物である。

脇下からの限定的な侵襲心臓手術技術の導入から5年間、700例の手術が実施され、成功率は100%であり、重篤な合併症が起きたり死亡した子供は一人もいなかった。これまでにこの治療法を受けた患者の中で、最年少は生後たった1.5か月、最低体重はたった3.8㎏である。
チュオン医師は、心臓病センターの医師たちが、この新しい切開法や特殊な手術技術に大変興味を持っていると話す。

2018年以前は、先天性心疾患の小児に対する手術は胸骨正中切開が唯一の方法であった。胸壁に大きな傷跡が残り、術後期間も長く、患者は術後の痛みに悩まされていた。
チュオン医師によると、患者への負担を軽減するために、医師たちは術式を改良したとのことであった。以前は、6㎝程だった切開が、現在は4㎝へと縮まっている。これにより、回復時間と人工呼吸期間も短縮され、術後の痛みの軽減にも役立った。
特に10代の患者にとって右脇下の小切開は、通常の生活にすぐに戻れるだけでなく、その傷跡が完全に右脇下に隠れるため、美容面で優れ、自分自身に自信を持つことができる。

現在までに、この方法は主に、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、部分型房室中隔欠損症、右肺静脈還流異常症、肺動脈弁狭窄症または大動脈弁上狭窄症、左心房粘液腫、三心房心などの比較的単純な疾患に適用されている。そして医師はそれぞれの症例が適応するかどうかを注意深く検討しなければならない。

引用元:Vietnam net


脇下の小切開手術1例目

脇下の小切開手術700例目

ベトナムでの複雑心奇形の手術の増加と、対象疾患・手術対象年齢の拡大を目指して
2020.6
プロジェクトマネージャー:岡山大学心臓血管外科准教授 小谷恭弘

ベトナムでは、年間約1万人の赤ちゃんが先天性心疾患を持って生まれていますが、そのうち手術を受けられるのは4割程度といわれています。このような状況の改善に寄与するべく、岡山大学心臓血管外科ではJICA草の根技術支援事業(循環器疾患領域)としてハノイ市のハノイ小児病院(National Children’s Hospital Hanoi)とハノイE病院(E Hospital, Hanoi)、ホーチミン市のホーチミン医薬大学病院(University Medical Center, HCMC)から医療従事者を受け入れ、心臓血管外科、循環器内科、麻酔科、看護の各分野で研修を実施する事業を開始しました。(2020年6月時点で11チーム修了)。
また、現地に岡山大学病院の医師や看護師を派遣し、医療従事者を対象とした講義も提供しています。
この研修を修了した医療従事者が所属の病院及び周辺の病院(※)で技術指導を行うことで自立的人材育成体制を確立し、ベトナム国内における先天性心疾患患者様の救命率を向上させることを目的としています。

※ 各病院が周辺地域の5~6の病院に対し出張診療や診療技術の指導を実施しています。
ベトナム人小児心臓血管外科医師を受け入れ、研修を行いました
2020.2 - 2020.5
岡山大学病院心臓血管外科で2016年から実施しているJICA草の根技術協力事業(循環器疾患領域)によるベトナムへの医療技術支援活動の一環として、2020年2月から5月にかけてベトナム・ハノイ小児病院から心臓血管外科医師1名を受け入れ、3か月間の研修を実施しました。
研修中は、小児先天性心疾患手術や病棟、集中治療室内の見学を通じて手術手技や周術期の患者様の管理方法を習得しました。帰国後は、研修で得た知識を現地の医療従事者と共有することでベトナム国内の患者様の救命率の向上とより良い医療の提供を図ります。
当科の活動が岡山大学SDGs取組事例として登録されました
2019
岡山大学病院心臓血管外科で2016年から実施しているJICA草の根技術協力事業(循環器疾患領域)によるベトナムへの医療技術支援活動として、2019年中にはハノイ小児病院(National Children’s Hospital Hanoi)から6名、ホーチミン医歯薬大学病院(University Medical Center HCMC)から5名、ハノイE病院(E Hospital, Hanoi)から4名の計15名に、心臓血管外科、循環器内科、麻酔科、看護の各分野で約4~6週間の研修を実施しました。
また、この活動が岡山大学の「SDGsの達成に向けた取組事例」として登録されました。

ベトナムの医療従事者を対象に講義を行いました
2019.10.17
岡山大学病院心臓血管外科で2016年から実施しているJICA草の根技術協力事業(循環器疾患領域)によるベトナムへの医療技術支援活動の一環として、ベトナムのハノイ市・ホーチミン市の病院で小児心臓血管外科、循環器内科、麻酔科、看護の各分野で講義を提供しています。
2019年中は、ハノイ小児病院(National Children’s Hospital Hanoi)で4日間、ハノイE病院(E Hospital, Hanoi)で2日間、ホーチミン医薬大学病院で4日間の講義を行いました。
また、2019年10月17日にはハノイE病院創立52周年記念式典において、当科教授笠原真悟が特別講義を行いました。
山本縫製工場・メディリンク・岡山大学大学院心臓血管外科の3者で共同開発した
「カルポッド・ベルト」が完成
2019.5.30
岡山大学大学院心臓血管外科は、山本縫製工場(香川県坂出市)、および メディリンク(愛知県豊田市)とともに、医療用心電計を1日中装着して常時計測 できる布製ベルト 「カルポッド・ベルト」 を開発しました。
このベルトは、電極となるステンレス線を布製ベルトに縫いつけたもので、 人体胸部に装着して、生体データをサーバーに送信する仕組みです。
心電図の計測に加え、心拍数や運動強度、体温などの情報が得られる医師の診断を支援する医療デバイスです。5月中には山本縫製工場から販売開始。

開発過程においては、日常生活での安定したデータ収集のための検証試験と臨床 応用の研究を、岡大高齢社会医療・介護機器研究推進講座(同 心臓血管外科に 併設)にて、笠原教授と坂野研究員が担当しました。
なお、このベルトは日刊工業新聞(2019年5月9日)、四国新聞(2019年5月25日)でも紹介されました。

JICA草の根技術協力事業の実施
2019.2
岡山大学病院心臓血管外科では、2016年からJICA草の根技術協力事業による医療技術支援活動(循環器疾患領域)として、ベトナムのハノイ及びホーチミン市内の病院から医療者研修チームを定期的に受け入れ、心臓血管外科、循環器内科、麻酔科、看護の各分野で指導を行っています。
2018年中にはホーチミン医歯薬大学病院から6名、ハノイE病院から6名の計12名に約6週間の研修を実施しました。